続・ヨーロッパ難民危機
ヨーロッパで今、何が起きているのか

あの時のことを、覚えているでしょうか。
2015年9月 ― シリア人の小さな男の子、アイラン君の遺体がトルコの海岸に打ち上げられ、私たちは、安全に暮らせる場所を求めてヨーロッパを目指す何十万人もの難民の苦しみと危険な海の旅の実態を知ることになりました。2016年3月 ― トルコとEU間の協定により、ギリシャからバルカン半島を北上しヨーロッパを目指す難民の避難ルートが閉ざされると、トルコから海路でギリシャに上陸する人の数は減りました。しかし、ヨーロッパにおける難民危機は、まだ続いています。
ヨーロッパで今、何が起きているのか ― 。
今号では、ご支援者の皆様から当協会に寄せられた質問にお答えしながら、未だ続く、難民の「ヨーロッパ危機」をお伝えいたします。

※EUとトルコは、トルコからギリシャへの難民流入を食い止めるために、2016年3月20日以降、トルコからギリシャにビザなしで海路から入国する人たちを、トルコに送還することで合意

Greece ギリシャでは…

Qギリシャからバルカン半島を北上するルートが閉鎖された時、さらに先のヨーロッパの国々を目指す多くの難民がギリシャに残っていたと聞いています。この人たちは今どこにいるのでしょうか?

Aこのときギリシャに残っていた人の多くは、ギリシャ政府管轄の避難所に移動し、そこで生活することになりました。UNHCRは政府と協働し、このような人々を保護し、安全かつ尊厳のある暮らしを送れるような生活の場を提供し支援することに注力しています。
政府管轄の避難所のほか、地域社会と協力し、使用されていないホテルや賃貸マンション、キャンプ場なども住居として提供できるよう手配。また、ギリシャに留まっている人たちとヨーロッパ各国へ先に逃れていた家族との再会や、受入れ態勢の整っている他国への移住をサポートするなど、多岐にわたる援助活動を行っています。

Q親や保護者のいない子どもたちの多くが、海を渡ってヨーロッパを目指していたと聞いています。このような子どもたちも、ギリシャにいるのでしょうか?

Aはい、ギリシャには保護者のいない約2000人の子どもたちが留まっており、多くは子どもに特化した支援を受けられる専用の仮設住居で暮らしています。

難民の兄弟
無邪気にかくれんぼをする兄弟。アテネで両親と再会を果たすまでは子どもだけで心細い思いをしていた

子どもたちは拘束されることを恐れ、難民登録に応じようとしないケースも多く、同じ年頃の子どもたちとあてもなく時間をすごし、助けを必要としているのに、どうすればいいのかわからずに途方にくれている子どももいました。UNHCRは、保護や支援に関する情報提供や逃れてきた状況についての聞き取りなどを通して、一人ひとりの精神状態に寄り添う形を探りながら、子どもたちを保護するために支援を行っています。

QUNHCRはギリシャに留まる人のために何か活動をしていますか?

Aはい、下記のような援助活動を続けてきました。
◎ 難民登録のサポート
◎ 保護者のいない子どもたちの登録・支援、はぐれた家族との再会をサポート
◎ 設備が整っていなかったり、受入れ数過多で生活の質が低下している避難所の環境改善
◎ 厳しい寒さになる冬に備えた住居の防寒対策
◎ 避難先での過酷な暮らしを支える生活支援 など

世界から、皆様から、ご支援を受けてできたこと

難民の一家
冬を前にテントからプレハブの仮設住居に移った一家
  • 政府管轄の避難地区以外にホテルや賃貸マンション、ホストファミリーなど 2万人の滞在場所を確保
  • 保護者なしで逃れている子どもに 734の居場所 を確保
  • 約1万人の家族の再会を支援
    (2017年末までにさらに2万人が再会できるよう、ヨーロッパ各国に要請)

Africa 一方アフリカでは…

Q2015年と比較して、海を渡ってヨーロッパを目指す人は減ったと思うのですが、具体的にどのような状況になっているのでしょうか?

Aトルコからギリシャに海を渡って逃げてくる人は確かに減りましたが、北アフリカからイタリアやスペインに逃れてくる人の数は増え続けています。
たとえば、リビアから命の危険を冒して地中海を渡る人は、2017年だけで9万人以上にのぼり、増え続けています。また痛ましいことに、2360人が行方不明になったり命を落としたとみられています。

地中海の地図:地中海を渡り、ヨーロッパに上陸した人の数の推移

 

Qヨーロッパを目指すアフリカの難民は、どこから、どのような理由で逃れてきているのですか?

A北アフリカのリビアから船に乗って逃げてくる人が多くを占めます。

救出された難民の生年
青年は、乗っていたボートから投げ出され溺れかけていたところを救助された

大多数はまずはじめに、貧困や紛争にさらされた周辺国から、情勢的にも経済的にも比較的安定しているとされているリビアに逃げてきて生計を立てようとします。しかし、実際はリビア国内の状況は安定しているとは言いがたく、逃れてきた人々は搾取や暴力の対象にされやすく、誘拐される人もいます。このような避難先での命を落としかねない状況から逃れるために、多くの人が命をかけてヨーロッパを目指して海を渡っています。

母国に帰ることはできません。

紛争が続き、私の国では社会の秩序が失われているのです。

― ソマリア難民 ホーダン(33)

QUNHCRはこのようなリビアの状況を変えるために援助活動を行っていますか?

AUNHCRはヨーロッパへの難民の流入に大きく関わるリビアでの支援を拡大し、以下のような活動を行っています。
◎リビアで保護を必要としている難民や、国内で避難を強いられている人々の保護
◎ 同国でもっとも弱い立場に追い込まれている人々の特定、難民登録の仕組みを強化
◎ 横行している暴力から人々を守り、施設や精神的なサポートを用意し保護する取り組み
◎ 難民・国内避難民が必要な医療を受けられるよう支援

また、難民が漂着するイタリアなどでも援助活動を行っています。とりわけ、親とはぐれたり、保護者なしで逃れてきた難民の子どもたちの保護はUNHCRの最優先事項のひとつです。特にイタリアでは、たどり着いた子どものうち94%以上がたった一人で逃げてきた子どもで、子どもの保護においてUNHCRの活動が特に重要な役割を果たしています。

子どもたちの命がけの旅

オマール
保護された後、UNHCRの職員にその厳しい道のりの様子を語るオマール(右)

「食べるものも飲むものもなく、まるで悪夢のようでした」。そう語るのは、母国イエメンの紛争から逃れ、避難途中で所持金を奪われ、サハラ砂漠をさまよい歩き、やっとリビアまでたどり着いた少年オマール(15)。彼はその後一時拘留され、密航業者を頼り海からヨーロッパを目指しました。しかし、乗ったボートが遭難しかけ、なんとか救助されてイタリアにたどり着きました。このように多くの子どもたちは、その旅の途中で何度も命の危機にさらされています。たどり着いた先で子どもたちの心の傷を癒し、未来への希望をつかむ足がかりを用意したい。そのために、UNHCRはヨーロッパにたどり着いた子どもたちの保護にも力を入れて取り組んでいます。

※ここまでの内容は、ニュースレター With You 38号(2017年10月)発行当時の数値・情報を元にしています。

ギリシャ レスボス島 難民キャンプ モリア受入センターでの火災につきまして

2020年9月9日未明、ギリシャのモリア受入センターで大規模な火災が発生し、大部分が焼失しました。死傷者は今のところ報告されていませんが、約12,000人の難民などが住まいと持ち物を失い、至急の支援が必要です。
UNHCRは難民の移送、テントや毛布、寝袋などの緊急援助物資の配布、 保護者の同伴のない子どもの保護などの支援を開始しています(9月10日現在の情報)。

動画:難民キャンプ火災の後、ホームレスとなる庇護申請者たち

(動画右下の設定で字幕をオンにしていただければ、日本語字幕が表示されます)

難民の試練の旅は今も続いています

中東だけでなく、アフリカやアジアでも、紛争や迫害により、多くの人々が避難の旅を強いられています。平穏な暮らしをしていた人が、ある日突然その当たり前の日常を失い、難民になるのです。

UNHCRは人道支援を最優先に、1人でも多くの難民の命を守るため、食料や医薬品、そして避難所を提供できるよう、難民支援活動を行っています。しかし、増え続ける難民の数に資金が追い付かず、必要な支援が届きにくくなっている状況です。

難民の人々がもう一度安心して暮らせる日まで、私たちの活動に力をお貸しください

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は1950年に設立された国連の難民支援機関です。紛争や迫害により故郷を追われた難民・避難民を国際的に保護・支援し、水や食料・毛布などの物資の配布や、難民キャンプなどの避難場所の提供、保護者を失った子どもの保護や心のケアなど、最前線で援助活動に尽力しています。
この国連の難民支援活動を支えるため、広報・募金活動を行う日本の公式支援窓口が、国連UNHCR協会です。

当協会は認定NPO法人ですので、ご寄付は寄付金控除(税制上の優遇措置)の対象となります。

*皆様のご支援は、UNHCRが最も必要性が高いと判断する援助活動に充当させていただきます。

皆様からのご寄付によって 多くの命が助かります。
水・食糧の供給から住居、医療、教育まで、長期的に難民を 支えるには、毎月のご支援が欠かせません。ぜひ、ご検討ください。
水・食糧の供給から住居、医療、教育まで、長期的に難民を 支えるには、毎月のご支援が欠かせません。ぜひ、ご検討ください。
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