緊急支援 食料危機から難民の命を守る

世界ではいま、多くの人々が飢餓の危機に直面しています。国連WFP(WFP国連世界食糧計画)によると、現在約3億4500万人が急性の食料不安に苦しんでおり、その数は新型コロナウイルスの流行以前より2億人も増加しました。その中でもっとも深刻な状況におかれているのが、避難を余儀なくされている難民や国内避難民です。

*UNHCRは国連WFPとともに、難民の食べ物と栄養の確保に努めている

世界規模での食料不安の深刻化、その要因

ソマリア国内避難民の一家

長引く干ばつから逃れたソマリア国内避難民の一家

世界規模での食料不安の深刻化は、各地で長引く紛争をはじめ、以下のような要因が考えられます。

  • 戦争や治安の悪化に直面する多くの国で食料不安が拡大
  • ウクライナの戦争や新型コロナウイルスの影響がもたらした経済的打撃、燃料や食料価格の世界的な高騰
  • 干ばつや洪水をはじめとした異常気象の影響により、住民の生活が崩壊
  • 避難を強いられる人の数が過去最多になるなか、増大するニーズに国際社会の支援が追いつかない
    *2023年に1億1000万人に達した

近年は食料危機自体が避難の要因にもなっており、住み慣れた土地で飢餓に直面し避難を強いられるケースも急増しています。
急性の食料不安に苦しむ人がかつてなく急増しニーズが増大する一方、援助活動資金は恒常的に不足しています。 支援の現場では苦渋の選択を迫られ、ただでさえ十分な量とはいえない食料の配給を減らさざるをえないといった事態も起きています。

人道危機の中で避難を強いられた先で 食料危機にさらされる命を守る

食料危機や紛争に直面する各国の状況と、避難を強いられた人々を守るUNHCRの支援についてお伝えいたします。

難民の母親たち
心配そうに子どもを抱き医療施設で順番を待つ難民の母親たち

アフリカの角:2200万人が急性食料不安に

ソマリアやエチオピアをはじめとするアフリカの角と呼ばれる地域の国々では、史上最長の深刻な干ばつが続き、避難を強いられる人が増加しています。収穫はほとんどなく水源は枯渇。物価の高騰も関連して、多くの人々が農業や家畜で生計を立てられなくなり、食料を手にすることが難しくなっています。劇的な食料不安の状況は続くと予測され、人道的ニーズが高まっています。紛争と治安の悪化も続いており、何百万人もの人々が避難を余儀なくされています。

国内避難民のアリさん

「作物を植えるだけで、収穫できるものがないのです。干ばつが始まってから、家畜の牛、そしてヤギも何頭か死にました」

農業と家畜で家族を養っていたアリさん。ソマリアでは干ばつが続いて雨が降らず、食料もなくなり家族とケニアへ逃れた

食料不安の原因 数年にわたる干ばつ 一部地域での洪水の発生 紛争 ウクライナの戦争の影響による食料輸入の減少 など

職員の声

「エチオピアのメルカディダで仕事をしていると、子どもに食べさせるために想像を絶するような経験をした母親たちに出会います。時には衰弱し、話すこともままなりません。このような時こそ、助けが必要です。飢餓が迫っています。UNHCRのような機関が支援しなければならないのは、いま、このような時なのです」

― UNHCR保護担当アソシエイト アウェル・アデム

救援活動をする職員たち

ウクライナ:1760万人に人道支援が必要

1760万人が人道支援を必要としているウクライナでは、多くの人が食料や水などの基本的なニーズを満たすことができない状況に。多数の地域に安全な人道的アクセスができず、支援が困難になっています。

【カホウカ水力発電所ダム決壊への対応】
へルソン州のダムの決壊後、洪水から逃れてきた人々に物資の配布や現金給付、心理社会的ケアなどの支援を実施。

救援物資を手配する職員たち
トルコ:2月の地震直後、緊急援助物資やフードパックを被災者に配布

シリア周辺国:12年にわたるシリアの紛争で深刻化する飢餓

シリア難民の避難生活が周辺国で長期化するなか、経済的打撃や新型コロナの影響など受け入れ国もさまざまな困難を抱えています。シリアの人々はさらなる貧困にさらされ、日々の食事にも事欠くほどに追いつめられた生活を送っています。

周辺国のシリア難民の受け入れ数 トルコ360万人 レバノン150万人 ヨルダン66万人 イラク26万人 エジプト14万5000人

トルコ
90%の難民が毎月の支出、または基本的なニーズを十分に賄えていない
ヨルダン
キャンプの外で生活する難民のうち、77%が食料不安または食料不安への脆弱性を抱えている
レバノン
67%の難民の家族が中等度または重度の食料不足に陥っている

子どもを抱えるシリア難民のカドラさん

「砂糖は3倍に、ガスは7倍以上に値上がりしました。家賃、電気代、水代も必要です」

レバノンでの日増しに厳しくなる生活について語るシリア難民のカドラさん。物価が上昇しUNHCRの支援だけでは必需品をカバーできず、食料などの調達に苦労している

イエメンの一家
戦闘で破壊された土地で生活する家族

中東イエメン:1700万人が食料不安に直面

紛争の開始から8年が経過したイエメンは、最も深刻な食料不安に直面する国の一つであり、1700万人が食料不安に陥っています。昨年は半年間の停戦により状況に多少の改善がみられたものの、2023年は2022年の同時期と比較して急性栄養失調に陥る人が増加。極度の飢餓を食い止めるために、さらなる援助活動資金が必要になっています。

職員の声

「子どもたちは学校に行けず、家族に食べ物を用意するために労働や物乞いをせざるをえません。親たちは住む場所を確保し、子どもに食べさせることに必死です。」

― UNHCRイエメン事務所 コミュニケーション担当官 マイサ・カーラフ

カリムさんと息子
カリムさんの足には榴散弾が入っている。家族のために日雇いの仕事をし、夜には食べ物を乞う暮らしが続く

アジア・アフガニスタン:深まる貧困と食料危機

国民の90%が十分な食料を手にすることができずにいます

2021年の旧政権の崩壊以降紛争はほぼ収まった可能性があるものの、アフガニスタンは依然として人道危機の最中にあり、300万人以上が国内で避難を強いられています。貧困が蔓延し、4000万人以上の人口の半数が深刻な食料不安に直面しています。物価の上昇や経済の崩壊で人々はさらに苦しい状況に追い込まれ、女性の権利の制限により国連とNGOで働くアフガニスタン人女性の活動も困難に。女性や子どもへの支援に影響が出ることが予想されています。

「娘に若くして結婚を強いることは絶対にしません。でも、まだ幼い子どもたちを仕事に出すことを考えはじめなければならないかもしれません」

苦しい生活を送る国内避難民の母親。食料不足と関連して、児童婚や児童労働のリスクの増加も懸念されている

診察を受ける子ども
UNHCRは栄養センターなどを設営。地域保健ボランティアが子どもの栄養状態を確認

アジア・バングラデシュ:過酷な生活環境の中で、栄養失調が拡大

ロヒンギャの家族の45%が、十分に健康的な食事を摂れていない

ミャンマーから逃れてきた約96万人のロヒンギャの人々は労働が許可されず、人道支援に頼りながら生活しています。この地で暮らす家族の45%は十分に健康的な食事を摂っておらず、栄養失調が拡大。資金不足により国連WFP(国連世界食糧計画)の食料支援も削減され、事態の悪化と、教育の中断や児童婚、ジェンダーに基づく暴力の増加も懸念されています。

職員の声

「キャンプ全体の5歳未満の子どもたちの約12%が、未だ深刻な栄養不良に苦しんでいます。モンスーンの時期を迎えている今は衛生状況が悪化することから、皮膚病や結膜炎、急性水様性下痢症などの感染症が流行することも課題の一つです。栄養状態が不十分な上、免疫力の弱い子どもたちの間で感染症が流行した場合、命に危険が及びます」

― UNHCRバングラデシュ コックスバザール事務所 准フィールド担当官 本田悠里

難民の話を聞くUNHCR職員
ガイアナ:同国に逃れたベネズエラの人々のニーズ調査を実施。ニーズの多くは食料や雇用、健康状態など

アメリカ大陸:ベネズエラからの難民・移民596万人中、53%が重度あるいは中等度の食料不安に

中南米およびメキシコ、カリブ海地域にいるベネズエラからの難民・移民596万人を対象にしたニーズ調査によると、全体の53%(316万人)が、重度あるいは中等度の食料不安の影響を受けています。

UNHCRが難民や国内避難民を食料危機から守るために実施していること

難民のセラフィーナさん

ケニア:セラフィーナさんは、3年間市場で野菜を販売。UNHCRは難民と受け入れコミュニティの自立と民間セクターの参加を後押しするため、パートナー団体と協力して市場にスペースを作るなど事業拡大を支援

① 食料や栄養のニーズに応える支援
UNHCRはパートナー団体と協力し、食料・栄養支援を実施。難民や国内避難民のニーズを把握し、栄養状態を回復・維持できるよう支援しています。食料の配送中継地から最終目的地までの輸送や配給、支援対象者の栄養状態の定期的なモニタリングなど幅広い支援を実施しています。

② 現金の給付支援
UNHCRは現金の給付支援を通して、難民や国内避難民が再び家族に食事を用意し、食料危機における保護状況が改善されるよう支援。過去2年、給付支援を受けた人々の支出の上位は常に食料が占めており、一人ひとりが自身のニーズに応じて食料を購入することで着実に食料支援につながっています。

③ 農業に関連した生計支援
難民の多くは農村部出身で、農業技術を身に付けています。適切な支援があれば家族を養うだけでなく、受け入れコミュニティに利益をもたらし地域の食料安全保障の確保に貢献できます。UNHCRはパートナー団体と協力し、難民の農業技術の向上や生計支援を実施。気候変動に強く栄養に配慮した農業生計を通じて、彼らが経済的に力をつけ食料を確保できるようサポートしています。

UNHCRの援助活動にご協力ください

ソマリアの国内避難民の子どもたち

UNHCRはアフリカの角をはじめ、世界各地でパートナー団体と協力して食料や栄養の緊急のニーズに対応する援助活動を行っています。

また、UNHCRは難民保護・支援活動を通してSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて取り組んでおり、こうした長期的な視点で食料安全保障の問題に対応していくことは、目標2の「飢餓をゼロに」だけでなく、貧困や子どもたちの教育をはじめ、さまざまな問題を改善する足がかりになります。

世界が一丸となって食料危機から難民や国内避難民の命を守るために、いま皆様のお力が必要です。 何卒温かいご支援をご検討いただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、 難民の命を守り、保護する機関です。
緒方貞子さんとルワンダ難民
ルワンダ難民を訪問する緒方元高等弁務官
UNHCRは、シリア・アフガニスタン・ウクライナなど世界中で家を追われた難民・国内避難民を支援・保護し、水や食料、毛布などの物資の配布や、難民キャンプなど避難場所の提供、保護者を失った子どもの心のケアなど、最前線で援助活動に尽力しています。1991年から10年間、緒方貞子さんが日本人として初めてUNHCRのトップである国連難民高等弁務官を務めました。 
※紛争や迫害などのため命の危険があり、国外へ逃れた人を「難民」、国内で避難している人を「国内避難民」と呼びます。

皆様のご支援でできること

※1年続けていただいた場合、1ドル=144円換算

フードパックを手配するUNHCR職員
毎月1,500円のご寄付

緊急時に配布しすぐに食べられるフードパック 43人分

給食をとる子どもたち
毎月3,000円のご寄付

小学校の給食(1週間分) 49人分

現金給付を受ける女性
毎月5,000円のご寄付

食料支援としての現金給付(1か月分) 9人分

  • 当協会へのご寄付は、寄付金控除(税制上の優遇措置)になります。お送りする領収証は確定申告にご利用いただけます。
  • ご支援者の皆様にはメールニュース、活動報告等を送らせていただき、難民支援の「今」、そしてUNHCRの活動を報告させていただきます。
  • Webでご寄付いただく際の皆様の個人情報はSSL暗号化通信により守られております

*皆様のご支援は、UNHCRが最も必要性が高いと判断する援助活動に充当させていただきます。

皆様からのご寄付によって 多くの命が助かります。
水・食糧の供給から住居、医療、教育まで、長期的に難民を 支えるには、毎月のご支援が欠かせません。ぜひ、ご検討ください。
水・食糧の供給から住居、医療、教育まで、長期的に難民を 支えるには、毎月のご支援が欠かせません。ぜひ、ご検討ください。
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