2011年3月にシリア危機が始まってから13年。紛争は終結することなく、シリア情勢は今も世界最大の避難危機となっています。505万人以上がシリアから周辺国に避難。シリア国内では、今も約720万人が避難生活を送り、約1670万人が人道支援を必要としています。
シリア国内では人口の推定90%が貧困にあえぎ、約1290万人が食料不安に陥っています。2023年2月にはトルコ・シリア大地震により、シリア国内だけで約6000人の命が奪われ、2024年現在もシリアの被災地では約23万人が避難生活を強いられています。その一方、2024年2月22日にはUNHCRシリア事務所の近隣にある住宅がミサイル攻撃を受け、死傷者が出たのみならず隣接する学校が閉鎖を強いられました。
シリア危機が始まった当初よりUNHCRは、周辺国のシリア難民および人々の受け入れコミュニティ、シリアの国内避難民や帰還民への支援を行っています。今も続く紛争のみならず、地震や山火事といった自然災害、社会経済の著しい悪化等の影響で人々の暮らしはさらに困窮していますが、シリア危機は報道されることが少なくなり世界から注目が集まらず、UNHCRの役割はかつてなく重要なものになっています。
シリア危機が始まってから13年。
引き続き、シリアと周辺国で支援が必要です。
シリア周辺国
開始から13年を数えるシリア危機は、今も世界でもっとも多くの難民を生み出している危機の1つです。また、ウクライナの戦争に端を発する物価高による経済の悪化や多くのシリア難民が避難するレバノンとイスラエルの衝突等は、周辺国のシリア難民とその受け入れコミュニティにも深刻な影を落としている他、情勢悪化により子どもたちは、退学、児童労働や早婚といった危機に直面しています。
UNHCRは国連開発計画(UNDP)とともに、引き続き「シリア周辺地域・難民・回復計画(3RP)」を主導。受け入れ国の取り組みを支える支援団体の活動をとりまとめ、各方面と連携して援助活動を実施します。
シリア国内
一部の地域の治安状況は依然として不安定であり、経済情勢はますます厳しい状況になっています。また、2023年2月にトルコ/シリアで発生した大地震では880万人以上が被災し、今も多くの被災者が援助を必要としています。
現在、1670万人以上が人道援助を必要としていますが、その数は前年度よりも9%増加。UNHCRは国内避難民のみならず、帰還民、無国籍者にも援助活動を実施していますが、援助へのニーズもさらは拡大しています。
どうぞ、忘れないでください
今もシリアの難民・国内避難民は苦難と闘っていることを
度重なる避難を強いられた国内避難民のワエルさん
ワエルさん(右)は2012年にシリア北部デリゾールの故郷を追われ、当初はデリゾール郊外のアルシュウラ地区へ、後にアル・マヤディーンに逃れ、生計のため食料品店を営んでいました。しかし、この店も迫撃砲によって破壊され、しかも足に重傷を負ったため切断を余儀なくされました。
今、彼はキャンプ暮らしを経て、家族と共にデリゾールに帰還。UNHCRとパートナー団体の援助で家を再建し、仕事にも就くことができましたが、家族の生活は厳しい状態が続いています。「私の願いは、子どもたちの未来を守ること。子どもたちが確実に生活できるようにし、子どもたちが人生に立ち向かえるようにすることです。」とワエルさんは語ります。
大地震で住まいを失ったシリア難民のゴフランさん
ゴフランさん(34歳、右)は2012年、安全を求めて夫と5人の子どもたちと共にシリアのアレッポから隣国トルコに逃れました。トルコ南部ハタイに定住したゴフランさんの家族は地元コミュニティに温かく受け入れられながら避難生活を送っていましたが、そんな中、2023年2月にトルコ・シリア大地震に襲われました。「地震は戦争よりも私や私の子どもたち、そして家庭に大きな打撃を与えました」と、ゴフランさんは今回の地震の影響の大きさを語りました。
ゴフランさん一家は地震発生後すぐに家を飛び出したため命に別状はありませんでしたが、今は新たに生まれた子どもを連れて、コンテナの町で生活をし、援助を必要としています。
2023年2月に発生したトルコ・シリア大地震への救援活動
2月6日早朝、トルコ南東部とシリア北部の広い範囲で、強い地震が発生。さらに、2月20日現地時間20時頃、再度強い地震に襲われ、約880万人が被災しました。シリア国内で被災した人々の中には、13年続くシリアの紛争により故郷を追われ、攻撃で破壊された安全性の低い建物や、薄いシェルターやテントで生活している人々もおり「危機の中で勃発した危機」として、多くの人々がさらなる窮地に陥りました。
UNHCRチームは、パートナー団体や政府当局と連携して被災地でのニーズを調査し、緊急対応を実施しています。シリア北西部においては、アレッポ、ハマ、ラタキア等へ数万点の救援物資を支給。さらに、冬用ジャケット、衣料キット等を含む援助物資、被災家族のためのテントも手配しました。また、集合シェルターの増設、1万人以上に及ぶ子どもとその介護者の保護・援助、被災者への心理社会的サポートも実施しています。
シリアと周辺地域におけるUNHCRの援助活動例
シリア国内
避難先で、帰還した先で、受け入れコミュニティで、試練に立ち向かう人々を支える
シェルターサポートや保護サービス、生活に必要不可欠な物資の支給等を通して、長期にわたる避難生活を送る人々や身ひとつで逃れてきた人々を支える
故郷に戻り生活を立て直そうとする人々の帰還に際し、ニーズに沿った物資の支援をはじめ、さまざまなサポートを行う
アレッポにあるこの学校の修復後、数百人の生徒が学校に復帰。ルジャインさんの夢は、建築家になり紛争で壊れた街の建物を建て直すこと
UNHCRが修復したクリニックで診療を受ける子ども。住居や学校のほか、生活インフラも破壊され人々が生活を立て直す上での障壁になっている
紛争で夫を失ったアビールさん。センターに相談後、小規模事業の補助金を受けミニマートを開業。自身で生計を立て、子どもを育てている
コミュニティセンターで職業訓練を受講後、靴づくりの仕事に就いた女性たち。センターでは、生計サポートの一環として幅広い支援を提供
シリア周辺国
母国を離れ、困難に直面しながら生きる人々を支える
現金の給付支援に関連した家庭訪問で暮らしの窮状に耳を傾けるスタッフ。新型コロナの影響で苦境にある人々への緊急の給付も実施
学校が再開し、笑顔を見せる姉妹。コロナ禍で教育へのアクセスが危ぶまれるなか、ヨルダンではe-learningなどで学習の継続をサポート
アパレル関連会社で訓練を受けるマームードさんは、UNHCRの奨学金で大学に進学。高等教育や職業訓練の機会の拡大は重要な課題
難民登録のない人々や障がい者といった弱い立場に置かれた難民も含む、包括的な医療支援の展開。受け入れコミュニティを圧迫せずに難民の医療アクセスを向上させるようサポート。
難民と地元の子どもたちを対象にアラビア語のクラスを開講。その他職業訓練など、コミュニティ全体が利する支援がより重要になっている
教師だったアリさんは、学校が爆撃され片足を失った。隣国に避難後、スウェーデンへ移住。第三国定住プログラムのニーズは依然として高い
シリアの人々が望んでいるのは、家族がいて住む場所があり、命の危険や飢えのない、ただ普通の、かけがえのない日常です。
UNHCRは、帰還民を含めたコミュニティの支援と共に、シリア国内で生活するイラクをはじめとする国々出身の難民の支援、不測の事態に備え緊急事態に即応する援助活動なども行っていますが、シリアの危機は世界から注目を集めることが少なくなり、昨年2023年はこの危機に対応するための活動資金は約30%しか充足されませんでした。加えて、今年は活動資金が昨年以上に集まっておらず、このままでは多くの援助活動を縮小せざるを得ない状況に追い込まれています。シリアの人々に今必要な支援を届けるため、何卒ご協力をお願い申し上げます。
シリアの人々を支えるために - 皆様のご支援でできること
シリアで避難生活を送る人々のための就寝用マット 約40枚分
シリアの人々が避難中でも温かい食事を摂れる調理器具セット 約10家族分
レバノンに避難するシリア難民のための1か月分の現金給付支援 約10人分
※1年続けていただいた場合。1ドル=149円換算
- 当協会へのご寄付は、寄付金控除(税制上の優遇措置)になります。お送りする領収証は確定申告にご利用いただけます。
- ご支援者の皆様にはメールニュース、活動報告等を送らせていただき、難民支援の「今」、そしてUNHCRの活動を報告させていただきます。
- Webでご寄付いただく際の皆様の個人情報はSSL暗号化通信により守られております。
*皆様のご支援は、UNHCRが最も必要性が高いと判断する援助活動に充当させていただきます。