南米ベネズエラ難民危機 故郷を追われる人、770万人

南米ベネズエラという国から、何を想像するでしょうか。世界有数の産油国であるベネズエラは、世界遺産の国立公園を持ち、カリブ海リゾートとして知られ、名曲「コーヒールンバ」が生まれた国でもあります。そして、ベネズエラは伝統的に、さまざまな国から何千人もの難民を受け入れる「難民受入国」でした。
しかし、政情不安と社会経済の混乱、食料難、そして人道危機等から、770万以上もの人々が故郷を追われ*、安全を求めて国境へ向かっています。その数は10年以上紛争が続くシリアやウクライナ、アフガニスタンに続き、世界で4番目に多くの人々が避難を強いられている、南米最大の難民危機となりました。
人々が武装グループや盗賊からの搾取や虐待から逃れ、急流の川を渡り、道なき道を進みながら命がけで避難の旅を強いられる中、1日も早い保護・救援が急務です。(* 2024年5月現在)

避難を強いられる人が5年で6000%増加
毎日5000人ものベネズエラ人が近隣諸国へ渡りました

2014-2018年 庇護希望者

政情不安と暴力行為、食料や医薬品、生活用品の不足により、多くの家族の生活が崩壊し、2018年には毎日5000人ものベネズエラ人が近隣諸国へ渡りました。そして、ベネズエラから逃れる人々の84%以上がコロンビア、ペルー、チリといった南米とカリブ諸国で受け入れられています。

何十万ものベネズエラ人が、正式な書類や法的許可もない状態に陥っています。この事態によって、人々は社会的セーフティネットを受けられない非常に弱い立場に置かれ、搾取・虐待・性的暴行・差別・排外等にさらされています

2024年4月、ブラジルで大洪水が発生
多くのベネズエラ難民も被災しています

洪水被害に遭ったブラジルのリオグランデドスル州の様子

ベネズエラの隣国であるブラジル南部で豪雨による大規模な洪水が発生。リオグランデドスル州等で170万人が被災し、54万人が避難を強いられる等、大きな被害が出ています。被災者には、この地に逃れるベネズエラ人やハイチ人を含む約4万1000人の難民、そして国際的な保護を必要とする人々が含まれています。
UNHCRは地元当局と連携し、緊急シェルター、毛布、マット、ソーラーランプ、衛生セットといった救援物資を配布し、被災者のニーズを調査。また、難民等が保護やリスクに関する公式情報に自分たちの言語でアクセスできるよう、コミュニケーションを促進するための技術支援も実施している他、難民、庇護希望者がこの災害で失った証明証の再発行、そして社会心理的サポートも実施しています。
多くの難民を受け入れるブラジルでは近年、アマゾン地域での干ばつ、ブラジル北東部バイーア州等での大雨等、異常気象が頻発し、壊滅的な被害をもたらしています。そして、深刻な気候変動は、難民や受け入れコミュニティに大きな影響を及ぼしています。

改めて、知ってください ― ベネズエラの人道危機
現地の人々が語る、ベネズエラの「今」

「薬の在庫が無くなっていたため、娘は適切な治療を受けられませんでした」

ブラジルで避難生活を送るエリジオ・テヘリナさん(33歳)

テヘリナさんと子どもたち
ワラオ系住人コミュニティのリーダー、テヘリナさんと彼の子どもたち

「私の7か月の娘は亡くなりました。」ワラオ系住人コミュニティリーダーだったテヘリナさんは話します。残る5人の子どもも飢きんで弱り、苦しんでいました。地元の市場で食べ物を見つけられなくなり、残された唯一の選択肢は国を離れることでした。「ブラジルに来ると決めたのは、子どもたちが飢えていたからです。食事は夜に一日一食。夕食をほんの少しだけでした。」ベネズエラ第二の先住民であるワラオ系住民の故郷ではHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の大流行により地域が荒廃し、たくさんのワラオ系住民の子どもが麻疹(はしか)でも亡くなっています。

「パンデミックが、私たちの生活を本当に悪化させてしまった」

チリで避難生活を送るアイリーンさん(30歳)

テヘリナさんと子どもたち
チリで避難生活を送るアイリーンさん(30歳)とその家族

母国ベネズエラにある家から7000kmにも及ぶ困難な陸上の旅を終え、チリに到着後の厳しい数か月を乗り越えた後に、アイリーンさんの夫ホセ・ドミンゴさんは首都サンティアゴで就職し、彼女は健康な男の赤ちゃんを出産しました。そんな中、新型コロナウイルスの世界的流行のため、一家は振り出しに戻ってしまいました。「パンデミックが、私たちの生活を本当に悪化させてしまったことに動揺しています」と語るアイリーンさん。 アイリーンさんたちが避難するチリでは南半球の冬が始まっており、夜は氷点下に達します。ペルーでは初雪も観測されました。UNHCRは、チリと近隣諸国で脆弱な家庭が屋根のある生活を維持できるように家賃助成金を増やし、食料の入った食料カゴや衛生キット、毛布などを配布しています。

家を追われたベネズエラの人々のために
UNHCRは人道支援を実施しています

避難を強いられるベネズエラの人々を保護するため、UNHCRは以下のような緊急支援を開始しています。

  • 保護者のいない、または家族とはぐれた子ども達の保護を含む、国境での保護活動のさらなる強化
  • 新型コロナウイルス感染症といった伝染病を防ぐための衛生グッズ(石けん等)の提供を含む、保健対策
  • 立ち退き等で住む場所を失った人々のための緊急の宿泊所や避難所の提供といった生活支援
  • 受入国の各政府と協力した滞在のための法的書類処理の迅速化、職業斡旋といった自立支援
  • 8月に冬を迎える南半球の避難所等で、保湿性の高い毛布の提供や、暖房器具・燃料・防寒着を購入するための現金給付といった防寒支援
ベネズエラ難民とUNHCR職員
UNHCR職員に新型コロナウイルス感染予防対策についての指導を受けたベネズエラ難民
先住民ワラオ系住民の子ども
ブラジルで安全に保護された、南米ベネズエラの先住民ワラオ系住民の子ども

UNHCRは1人でも多くの難民・国内避難民を保護するため、活動を続けています

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、 難民の命を守り、保護する機関です。
緒方貞子さんとルワンダ難民
ルワンダ難民を訪問する緒方元高等弁務官
UNHCRは、シリア・アフガニスタン・ウクライナなど世界中で家を追われた難民・国内避難民を支援・保護し、水や食料、毛布などの物資の配布や、難民キャンプなど避難場所の提供、保護者を失った子どもの心のケアなど、最前線で援助活動に尽力しています。1991年から10年間、緒方貞子さんが日本人として初めてUNHCRのトップである国連難民高等弁務官を務めました。 
※紛争や迫害などのため命の危険があり、国外へ逃れた人を「難民」、国内で避難している人を「国内避難民」と呼びます。

UNHCRの難民支援にご協力ください

幼い子どもを連れて、450km先の町を目指してコロンビア ― ベネズエラ国境を越える若いカップル

「逃れて来る人々は飢餓、医療の欠如、政情不安、脅迫、そして恐怖を語りました。彼らは家族であり、女性であり、子ども、若い少年・少女であり、時には何日も徒歩で旅をして避難を強いられ、非常に弱い立場に置かれた人々です」とエドゥアルド・ステインUNHCR-IOMベネズエラ難民・移民担当特別代表は語ります。

南アメリカ/カリブ地域史上最悪と言われる今回のベネズエラ難民危機によって避難を強いられている人々のため、UNHCRは地元当局と協力して援助活動に尽力しています。しかし、ベネズエラの危機は世界で報道されることの少ない「忘れられた危機」となっており、難民への援助を続けていくための活動資金は恒常的に大きく不足しています。

故郷を追われるベネズエラの人々の尊厳と未来を守るため、どうぞ、今すぐ、ご支援ください。

あなたのご支援でできること

※1ドル=149円換算

毎月1,500円のご寄付
1年で、防水性・耐久性が高い就寝用マットレス 約60枚分
毎月3,000円のご寄付
1年で、手で簡単に持ち運びできる飲料水用バケツ 約80個分
毎月5,000円のご寄付
1年で、避難中でも家族と温かい食事がとれる、調理器具セット 約18家族分
  • 当協会へのご寄付は、寄付金控除(税制上の優遇措置)になります。お送りする領収証は確定申告にご利用いただけます。
  • ご支援者の皆様にはメールニュース、活動報告等を送らせていただき、難民支援の「今」、そしてUNHCRの活動を報告させていただきます。
  • Webでご寄付いただく際の皆様の個人情報はSSL暗号化通信により守られております

*皆様のご支援は、UNHCRが最も必要性が高いと判断する援助活動に充当させていただきます。

皆様からのご寄付によって 多くの命が助かります。
水・食糧の供給から住居、医療、教育まで、長期的に難民を 支えるには、毎月のご支援が欠かせません。ぜひ、ご検討ください。
水・食糧の供給から住居、医療、教育まで、長期的に難民を 支えるには、毎月のご支援が欠かせません。ぜひ、ご検討ください。
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