コックスバザール難民キャンプでの水不足との闘い
ミンハジ・ウディン・アーメドは、ロヒンギャ難民とその受入地域の住民の大規模な水と衛生のニーズに対処するために、UNHCRがバングラデシュでの取り組みをどのように強化したかを説明します
公開日 : 2019-01-23
2019年1月4日 ― 90万人以上のロヒンギャ難民がバングラデシュ南東部のコックスバザール地域にある36か所に住んでいます。ほとんどの場所で水が不足しています。この難民全員に適切な水源を確保することは困難です。そのほとんどは2017年後半にバングラデシュに逃れてきた人々です。そのため、UNHCRおよびパートナーは、2018年を通して、水と衛生の大規模なニーズに対処する取り組みを強化しました。
ミンハジ・ウディン・アーメドは、コックスバザールでロヒンギャ難民の対応に取り組んでいるUNHCRの水・衛生担当補佐官です。彼は過去5年間、UNHCRとコックスバザールの水・衛生プログラムに取り組んできました。
Q:難民キャンプが直面する最大の水問題は何ですか?
A(ミンハジ・ウディン・アーメド衛生担当補佐官):バングラデシュのこの地域では、11月末から4月、または5月までの乾季に水不足の危機が発生します。水位が急激に下がるため、水を汲み上げることが非常に困難になります。
ナヤパラ登録キャンプでは、私たちは運河や一時的なダムのような他の水源に頼らなければなりません。なぜなら、主な貯水池は通常4月から3か月間干あがってしまうからです。水はトラックとパイプラインで運ばれ、水質処理されてから配給されます。
2017年8月の大規模難民流入以前は、クトゥパロン難民キャンプには134本の深い掘り抜き井戸がありました。難民の流入後、難民人口の急増により、大量の水を供給することが緊急に必要になったために、より多くの掘り抜き井戸を設置することが決定されました。
浅い掘り抜き井戸は3~4日以内に設置できますが、深い掘り抜き井戸は3~4週間かかります。いくつかの非政府組織、国際機関、地元企業、その他助けてくれた人々によって、約20,000本の掘り抜き井戸がごく短期間でキャンプに設置されました。
Q:大きな問題は何だったのですか?
アーメド補佐官:難民の流入が始まった時点では、不可欠なサービスを提供することが急務であったため、ロヒンギャを助けるために働いている多くの組織の間で計画が不十分でした。多くの掘り抜き井戸が設置されましたが、各井戸が近すぎることがしばしばありました。これは、井戸が近くのトイレや他の汚染源から容易に汚染される可能性があることを意味しました。
また、同時に20,000本の井戸から水が汲み上げられ、地下第一階層の帯水層の水位が劇的に低下しました。これはキャンプ内だけでなく周辺の受入コミュニティにとっても深刻な水不足を引き起こす可能性があります。
「キャンプで大規模な病気の発生の可能性がありました。しかし、それは起こりませんでした」
この問題を克服し、将来の水のもめごとを回避するために、2018年のはじめに、水・衛生部門で働いている諸機関が、浅い掘り抜き井戸の使用を止めて、深い掘り抜き井戸のみの設置を開始することを決定しました。
私たちの大きな懸念の1つは、浅い掘り抜き井戸が水関連の病気の発生をもたらしたかもしれないということでした。この可能性を回避するために、私たちは緊急トイレを水と衛生の専門家とバングラデシュ政府によって承認された、より衛生的で新しいデザインのものに置き換えることを始めました。
Q:日々、水不足がどのような問題を引き起こしますか?
アーメド補佐官:ナヤパラ難民キャンプがあるテクナフ地域に地下水がないということは、地表水に頼らざるを得なかったことを意味しています。しかし乾季には、貯水池に十分な水がなかったため、近くの運河から水を汲み上げてトラックが運び込まなければなりませんでした。 3~4台のトラックが毎日続けて使用されていました。難民の人口が増えたため、私たちは5つの新しいダムを建設しなければなりませんでした。
Q:乾季がもたらす、さらなる問題は何ですか?
アーメド補佐官:通常の時期、私たちは毎日一人あたり20リットルの水を供給しようとします。 2017年3月から5月にかけては、給水制限を実施しなければなりませんでした。そのため、UNHCRのパートナーや他の水と衛生に関する機関がバングラデシュ政府と協力して、大規模な水と衛生のニーズに対処するため2018年を通して努力を強化しました。
太陽エネルギーを使用することで、人道コミュニティはエネルギーコストと燃料排出量を削減することができました。水中のバクテリアや微生物を殺すために塩素を加える「塩素処理」は、この規模の難民キャンプでは命を救うものです。
非常に困難な状況にある多くの人々にきれいな水を提供するために、緊急事態がはじまってから、UNHCRはどのような物理的な問題やその他の課題に直面していましたか。
巨大なバルカリ‐クトゥパロン難民居住地の丘陵地形が最大の課題でした。ほとんどのシェルターは、地上約40~60フィートの丘の頂上または側面に建てられました。家族は水を集めるために丘を下らなければなりませんでした。
「浅い掘り抜き井戸は、水関連の病気の発生をもたらしたかもしれません」
難民の流入が始まった頃、道路は砂利だらけで非常に滑りやすいため、特に雨季には、水を集めて丘の上の避難所まで運ぶのは本当に大変でした。
Q:なぜ私たちは太陽光発電やその他の持続可能な技術を推進しているのでしょうか?
アーメド補佐官:深い掘り抜き井戸は人口のために十分な水を汲み上げますが、主な問題は何千もの水場を監視し維持する方法です。解決策は高架水槽を設置し、ポンプの助けを借りて水を汲み上げ、複数の蛇口を使用し官網を通して水を供給することでした。
ポンプを運転するためには、電気かディーゼルかその他のエネルギーが必要でした。太陽光は最も効率的で環境に優しい選択肢であり、そして最も費用対効果の高い方法でした。
テクナフ地域は、その特定の地理的特性により、引き続き水不足に直面するでしょう。地域住民と難民の両方を支える水の需要を満たすための持続可能な解決策を見つけるためには、大きな投資が必要です。淡水化プラントを建設すること、または他の技術による解決方法を検討することかもしれません。アジア開発銀行(ADB)や他の出資元と話し合いが行われており、バングラデシュ政府の支援も必要となるでしょう。
Q:きれいな水源を持つ必要性について、各家族はどの程度の知識を持っていますか?
アーメド補佐官:ほとんどの難民は、病気を避けるために安全で清潔な水を確保することが重要であると理解しています。しかし、水が汚れた容器によって簡単に汚染される可能性があることを誰もが理解しているわけではありません。人々が水を集めたり運んだりしている間に水が汚染されることがあります。女性も男性も水を汚染する可能性がある衣服で水の容器を覆います。
私たちのチームは、地域内の安全な水の収集に関する意識を高めるために、難民キャンプで定期的な衛生講習を実施しています。
Q:難民は将来のための水道網や水栓の計画にどのように関わってきましたか?
アーメド補佐官:私たちは技術的なサポートを提供することができますが、コミュニティからのサポートはプロジェクトを実行する上で非常に重要でした。私たちの太陽熱を利用した水の塩素処理プロジェクトでは、高架タンクの設置、ソーラーパネルの設置、掘削孔、管網のために広いスペースが必要でした。
「水の需要を満たすための持続可能な解決策を見つけるためには大きな投資が必要です」
難民キャンプは非常に密集しているので、広いスペースを確保することは困難でした。コミュニティは非常に協力的で、シェルターを移動させてスペースを提供してくれましたので、処理施設を設置することができました。設置が完了したので、コミュニティと難民の両方から、管網、水栓、およびソーラーパネルの維持管理について定期的にフィードバックを提供もらい、水不足を回避できるようにしました。
Q:あなたの仕事の最も困難な面は何ですか?
アーメド補佐官:難民に十分な水を供給され、水のシステムが適切に維持されていることを確認することです。難民や受入コミュニティからの支援は、水のネットワークが円滑に運営されるためにきわめて重要です。
キャンプにスペースがないことも私たちにとって大きな課題でした。
Q:あなたの仕事の中で最もやりがいのある部分は何ですか?
アーメド補佐官:難民の流入が始まったときに、政府、様々なパートナー、その他の国連諸機関と密接に協力したので、到着人数が多いにもかかわらず、UNHCRは安全な飲料水を難民に提供することができました。そうでなかったら、キャンプで大規模な病気が発生していたかもしれません。しかしそれは起こりませんでした。より効率的な方法を採用し、水質を確保しながら、私たちは尽力し続けます。これはUNHCRの最大の成果であり、誇りに思っています。
Areez Tanbeen Rahman
原文はこちら(英文)
Fighting water scarcity in Cox’s Bazar refugee camps
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