「この法律によって、私はやっと、存在するとはどういうことなのかという感覚を得ることができます」

ウクライナの新しい無国籍認定制度では、身分証明書がない人々に仕事や勉学、医療へアクセスする権利が与えられます

公開日 : 2020-09-14

亡くなった義母・オレーナの写真が入っているアルバムを持つウクライナのキーウ出身の無国籍女性であるアンナ・ミリャシェヴァ(22歳)

オレーナ・ミリャシェヴァは、癌を患っていたにも関わらず医療へのアクセスを拒否されました。彼女は外来診療所への登録を受け付けられず、処方箋を受け取ることもできず、ウクライナ市民が無料で受けることのできる健康診断も受けることさえもできませんでした。

 
キーウ(ウクライナ)2020年7月17日 ― 2019年5月、彼女の病状は急激に悪化し、10月に亡くなりました。しかしその時でさえ、彼女の家族が直面する問題は続きました。彼女の娘であるアンナは、かろうじて、母の最後の望みであった、死亡診断書を受け取り、火葬することができました。

 
「私の母は、25年間、(身分)証明書を受け取るために苦闘してきました」とアンナは言います。「もし彼女がもう少し早く国民保健制度にアクセスできていたら、おそらく癌であるとの診断を受け、早い段階で治療することができていたでしょう。」

 
オレーナは、カザフ・ソビエト社会主義共和国で生まれました。しかし、1991年に旧ソビエト連邦が崩壊すると、彼女は数十万人の人々と同様に、中央アジアでは無効のパスポートとともに、無国籍となりました。

 
彼女は一時期ロシア連邦に住み、その後ウクライナに移って娘を出産しましたが、一国として彼女を国民として認定しませんでした。彼女だけでなく、キーウで生まれたアンナも、ウクライナに合法的に留まることのできる在留許可を得ることができませんでした。

 
ウクライナの首相によって署名された法律によって、このような難局から脱しました。この法律は、2020年6月16日に議会で承認され、推定3万5,000人の無国籍または法的に曖昧な状況にあり無国籍になる危機にさらされている人々を助けるための、無国籍認定制度を正式に制定します。

「この法律は、陰に隠れてひっそり暮らしている何千人もの人々の生活を変革するでしょう」

この法律は、首相府の専門家や市民社会やUNHCRからの意見を得た議会の人権委員会によって起草され、オレーナやアンナのように国籍を持たない人々が、無国籍として認められ、かつ1年間有効な暫定在留許可を得ることを可能にします。

友人と共に映る亡くなった義母・オレーナ(左)の写真を持つ、アンナ・ミリャシェヴァ。オレーナは、ウクライナで21年以上も在留許可を得るために苦闘したが、(許可を得ることができる前に)2019年に癌で亡くなった

暫定在留許可は、その保持者の合法的な在留を認めます。その期間、彼らは移動の自由、仕事、教育や福祉へのアクセスなど、基本的権利を享受することができ、継続して2年間在留すると、彼らは永久在留資格を申請することができます。その資格でウクライナに5年間在留すると、無国籍者は帰化申請をすることができるのです。

 
「この法律は、陰に隠れてひっそり暮らしている何千人もの人々の生活を変革するでしょう」と、UNHCRウクライナ事務所代表のパブロ・マテウは言います。「私たちは、発効後3か月以内に締結される法律の導入中に、支援を提供する用意があります」と、彼は加えて述べました。

 
2013年1月にウクライナが無国籍に関する二つの国連文書:「無国籍者の地位に関する条約(1954年)」及び「無国籍の削減に関する条約(1961年)」にアクセスしている間に結んだ誓約に基づいて、法律の採択が行われました。

 
法律はこれから数か月で実効されるため、UNHCRはウクライナの国家移民サービスに対して、ウクライナの25州で主要なスタッフを訓練し、無料法律援助へのアクセスを提供するといった、支援を提供します。加えて、政府が、法律に示されているように、無料法律援助を与える一方で、UNHCRは無国籍認定制度実施の初めの段階において、申請者を支援する準備ができています。UNHCRはまた、無国籍者や、その地位が認められる可能性のある無国籍の危機にさらされている人々の中での認識が高まるように努めます。

「この法律があることで、私はやっと、人が存在するとはどういうことなのかという感覚を得ることができます」

無国籍であることが、世界中で何百万人もの人々の生活を阻害しています。この法律を採択したことにより、ウクライナは、世界で21番目に無国籍認定制度を制定した国になります。

 
悲惨にも彼女の母を救うには遅すぎましたが、アンナはこの法律が、彼女が生涯を通じて社会の周縁で過ごしていた自分を一歩進ませることができると願っています。

 
「パスポートがなかったため、私は大学に入学することができませんでした。ここ数年間はオンラインマーケティングの仕事をしていましたが、きちんとした仕事に就くことができません。国の公的サービスも利用できず、誰も私のことをほとんど気にかけてくれません」と、彼女は言います。

 
「しかし、この法律があることで、私は普通の人になる機会を得ることができます。旅をし、きちんとした仕事に就き、プロとして成長します。しかし何よりもまず、私はやっと、人が存在するとはどういうことなのか、という感覚を得ることができるでしょう。」

 
UNHCRの2024年までに無国籍をなくすキャンペーン( #IBelong ※英語サイト)を支援する方法を見つけましょう。

 
原文はこちら(英文)
‘With this law, I will finally get a sense of how it is to exist’

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