トルコ・シリア大地震の犠牲者を数える生存者たち

アーメット・エーカンさんと家族は、2月の震災から命がけで逃れましたが、多くの人々と同じように、愛する人や家を失い、現在、復興への長く不確かな道のりに直面しています

公開日 : 2023-03-24

ハタイ(トルコ)2023年3月17日 ― 2月6日未明、地震の最初の揺れで眠りから覚めたアーメット・エーカンさんは、最初何が起こっているのか理解できませんでした。彼と妻のファトマさんは3人の子どもたちが部屋で叫ぶ声に衝撃を受け、行動を起したのです。

「子どもたちは叫び始めました。(揺れは)とても強かったです。私たちはどうすれば良いか分かりませんでした」とアーメットさんは語りました。ファティマさんは言い添えました。「地震で地面に投げ出され、歩くのもやっとの状態でした。こんなに長く続いたのです。脱出できたことに感謝しています。」

その数分後、トルコ南部のハタイにあるアパートの外の通りに立っていた彼らは、最初の安堵から一転、建物全体が瓦礫となって崩れ落ちるのを見て、恐怖を覚えました。

「四方八方から悲鳴が上がっていました。泣いている人もいました。何とか外に出た人は、倒壊した建物の中にいる人々を助けようとしていました」とアーメットさんは回想します。

靴を履く暇もなく家を飛び出して、アーメットさんは絶望を実感しました。「どうやって子どもたちを守ればいいのか、どうすればいいか、分かりませんでした。とても寒く、大雨が降っていました。びしょ濡れになってしまいました」と彼は言いました。

「私たちには何も残っていません」
アーメットさんの母親のアリヤさん
今回の地震で息子と孫を失ったアーメットさんの母親のアリヤさん

しかし、兄のムスタファさんが住むビルも倒壊していることを知り、自分たちの苦悩は吹き飛びました。「その時の気持ちは筆舌に尽くしがたいです。妻子を車に残し、兄の家へ走りました。私たちが到着した時、建物は廃墟になっていました。私たちは懸命に努力しました…。」レスキュー隊がムスタファさん(35歳)と彼の家族のもとへ向かうため、アーメットさんは必死の思いで救助にあたりました。兄の妻と娘は残骸から生還しましたが、ムスタファさんと息子タヒルさん(11歳)は、悲劇的なことに倒壊で亡くなったのです。

母親と姉、そして幸いにも生き残った子どもたち、家族に囲まれたアーメットさんは、森に囲まれたムスタファさんの横にタヒルさんが寄り添う、ムスタファさんが撮った携帯電話のモノクロ自撮り写真を取り出しました。

「今はまだ、自分たちの置かれている状況を理解しようとしている段階です。私たちには何も残っていません。今は、今日しかないのです」とアーメットさんは言います。

アーメットさんと彼の家族の表情にうかがえる痛みと喪失感は、2月の大地震で被災したトルコ南部とシリア北部の数百万人と同じです。この2つの国で5万5000人以上の死者が確認されており、さらに数千人が今も行方不明です。

生存者の多くはホームレスとなり、あるいはトラウマのために家に戻ることができないでいます。トルコ南部では、地震で壊滅的な被害を受けた11地域に住む1500万人のうち、約174万人がシリア難民です。しかし、死と破壊はすべてのコミュニティに影響を及ぼし、あらゆる都市や町が廃墟と化しているのです。

動画:グランディ弁務官、トルコ被災地を訪問

アーメットさんと家族は、ハタイにある臨時宿泊センターの一つに滞在しています。もともとはシリア難民を受け入れるために建設されましたが、現在は当局によって、トルコとシリアの両方の地震被災者を保護するために使用されています。すべてを失った彼らは、2階建てに並べられたファミリーサイズのプレハブ式コンテナの一つに住めることに感謝しています。

「私たちは皆、人間です。私たちは皆、この地震で被災したのです」とファトマさんは語りました。「私たちは皆、痛みや悩みを抱えています。神様が皆を助けてくれます。トルコ人とシリア人の間に違いはありません。私たちは皆、非常に困難な状況に置かれているのです。」

「トルコ人とシリア人の間に違いはありません」

「私たちはここに来て、ありがたいことに、泊まる場所、服、食料を与えられました」とアーメットさんは付け加えました。

UNHCRは当局の要請を受け、国連の広範な救援活動の一環として、地震発生日から政府の地震対応を援助しています。UNHCRはテント数千張、マット、保湿性の高い毛布、ヒーターといった救援物資を提供し、災害・緊急事態管理大統領府(AFAD)、家族・社会サービス省、臨時宿泊センターを管理する移住管理大統領府が被災者に配布しています。

3月11日、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、アーメットさんと家族が滞在しているハタイのセンターを訪れ、彼らの喪失に哀悼の意を表しました。5日間にわたるトルコとシリアの地震被災地への訪問の一環として、被災者や、災害に対応する当局、人道支援スタッフに会うために現地に赴いたのです。

「ここトルコでも、私がつい先日までいたシリアでも、人道支援が引き続き強く求められています」とグランディ弁務官は述べました。「ここハタイのような都市では、家、店、学校、保健所など、すべてを再建する必要があります。すべてが失われてしまったのです。」

被災地では多くの家族が行方不明者を探しており、破壊された家屋や都市の再建は長期にわたる困難な課題です。緊急の優先課題は物資の問題だけではなく、被災者のニーズに応えることです。

アーメットさんとファトマさんは、震災が子どもたちの心理的な健康状態に大きな影響を与えている、と指摘しました。「私の幼い娘は車の中にいたがっていました。コンテナは倒れないと説得したのですが」とアーメットさんは説明しました。

センターでは、子どもたちの関心を集め、彼らの苦難を一時的に忘れさせてくれるような活動が企画されています。長女のメルヴェさんは、日中一緒に遊ぶ友だちができた、と言います。

しかし、家族の避難所に戻ると、彼女は控えめに、緊張した面持ち微笑みながら語ります。「震災の話をすることさえ怖いの。」

この災害がもたらした被害は、目に見えるもの、目に見えないものの両方があり、修復には時間がかかるでしょう、とグランディ弁務官は最後に語りました。「家だけではなく、生活を取り戻すには、数か月、たぶん数年かかるでしょう。」

原文はこちら(英文)
Earthquake survivors in Turkiye count the devastating toll

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