【みんなで取り組む20億キロ】東京家政学院中学高等学校 保健体育科
公開日 : 2020-03-20
東京家政学院中学高等学校は持久走で難民とともに400㎞を走る!!
東京家政学院中学高等学校は、グローバル人材の育成やSDGsの取組に力を入れられており、
2019年度の3学期に、中学校保健体育の持久走の授業で「みんなで取り組む『難民と進む20億キロメートル』」を活用してくださいました。
また、この単元開始前には、当協会職員の天沼による『あるものないものワークショップ』を実施して、難民問題について理解を深めたのち、単元の最後には学生団体SOAR代表の桐生によるワークショップ『いのちの持ち物けんさ』を体験することにより、難民問題を自分事にすることによって、今から未来にかけて自分たちにできることを考えました。
以下、保健体育科の長尾大介先生に活動の様子をまとめていただいたきましたので、ご覧ください。
※2つのワークショップについて詳しくはこちら
活動について
~参加のきっかけ~
東京家政学院中学校体育科は、毎年実施している体力テストの結果と全国の平均値を比較した時に、特に全身持久力を表す「20mシャトルラン」の値が下回っていることを受け、体力向上のための取り組みとして、数年前から体育の授業で持久走(12分間走)を実施していました。
毎回の走行距離を測るだけでなく、ラップタイムや心拍数を計測して、自分の運動強度を知ることや体力の回復率を調べることでモチベーションのアップを図ってきました。
一定の効果がでてきた一方で、特に運動に苦手意識をもつ生徒には、走ること自体が苦痛になっていることも課題でした。
また、本校の学びの特色として、グローバル人材を育てることやSDGsへの取り組みを深めていることから、「走る」ことを別の視点で捉えることによって、国際理解の観点から世界で起きていることに目を向け、自分たちの取組がグローバルな活動の一助となりうることに気づくことができるチャンスであると考え、本校社会科教員から国連UNHCR協会の取組を紹介されて、授業に取り入れることにしました。
~プログラムについて~
今回は、難民への理解を深めることと、今、自分にできることや将来のできそうなことなどを考えるために、持久走の前後に2回のワークショップを実施していただきました。
[第1回 あるものないものワークショップ]
天沼氏にワークショップを実施していただき、難民の状況の写真を見ながら、「あるもの」と「ないもの」に気づくことによって、生きていくうえで必要なものを失った人々がいることを知り、現状を理解することができました。
また、難民となった人々が1年間に移動する総距離が20億キロメートルもあること知り、次の授業から始まる持久走の走行距離目標に向けての意欲を燃やす動機付けとなりました。
[持久走]
中学全体で400kmを走破する目標を立てました。
最終的には雨天で走れない日ができてしまい、348kmと目標には届かなかったのですが、この持久走では、単純に目標を達成しようとする気持ちだけではなく、難民問題に対して、今の自分にできることをやっていこうとする気持ちをもつ第一歩となりました。
回を重ねるごとに目標に対する意識が高まり、それぞれの距離を伸ばすことはもちろん、ペア同士で叱咤激励の声かけをするなど、お互いがお互いをカバーし合うよいチームワークが作られてきたと感じました。
目標に対して自分だけが頑張ろうとするものではなく、他人に対しても関心をもつことの重要性にも気づきがあり、今は近くの他人にだけかもしれませんが、将来的には世界の他人に対しても関心を持つきっかけとなってほしいと感じました。
そして、多くの生徒が自己の記録を伸ばすことに繋がりました。
また、教員同士の呼びかけもあって、多くの教員が生徒とともに走ることもありました。
[第2回 いのちの持ち物けんさ]
最後の授業で行ったワークショップは、学生団体SOARの代表である横浜市立大学の桐生さんに実施していただきました。
自分自身のアイデンティティを構成する要素を見つめ直し、それらの喪失の疑似体験をすることによって、自分への気づきだけでなく、自分たちと難民との間における差違はないことにも気づくことができました。
これらの気づきや感情を自分の言葉を使ってグループでシェアすることで、改めて難民への理解を深めることができました。
参加者の感想
・はじめは走りたくないと思ったけど、難民の人たちは、私が思っている以上に辛く苦しい生活をしていたり、移動をしているので、少しでも自分で体験できてよかったと思いました。
・難民の人たちがどのような暮らしをしていたり、なぜ存在してしまうのかが分かりました。もっと難民の人たちに寄り添い解決策を探していきたいです。
・難民はずっと歩いたり走ったりして逃げているので、自分が少しでも難民の気持ちに寄り添うことができればいいなと思いました。
・はじめて参加してみて、難民の人々の気持ちは自分には分からないけど、命がけであったり、長い距離を移動する大変さなどは、前よりも分かることができました。
・もともと、難民の人々についてまったく触れる機会がなく、知らないことばかりだったけど、このプログラムを通して、難民の人々について分かったので、いい経験となった。
・募金などのボランティア活動をして支援できたらいいなと思いました。
・私は持久走が嫌いですが、プログラムに参加することによって意識が高まりました。
最後に
保健体育科の持久走に『難民と進む20億キロメートル』の要素を取り入れるだけでなく、難民問題を自分事にして考えるワークショップを活用することによって、より一層意識の部分が高まり、この先の行動と生徒の皆さんの大きな成長につながっていく様子が伝わってまいりました。
さらに、生徒の皆さんの周りの人々やこの活動を知った人たちにも、世界の課題について考える機会が生まれ、さらに大きな広がりを生むことが期待されます。
国連UNHCR協会は、日本各地の皆さんが、このような取り組みを通じて世界にアクションを起こしていくことを応援しております。
皆さんのアイディアにより、活動の可能性はさらに広がります。
ご関心を寄せていただいた方は、いつでも当協会までお問い合わせください。
最後になりましたが、この活動にご賛同いただいた東京家政学院中学高等学校の皆さん、そしてお忙しいなか、記事作成にご協力いただいた保健体育科の長尾大介先生や、ご協力いただいた社会科の川邊健司先生や教職員の方々に深く御礼申し上げますとともに、皆さんのさらなるご健康とご発展を心よりお祈り申し上げます。