【開催レポート】4月22日 ウクライナ緊急支援報告会(前編)

公開日 : 2022-05-12

2月24日にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して2か月が経過しました。残念ながら、現地ではいまだに緊迫した情勢が続き、多くの市民の安否が心配される状況にあります。

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は4月26日、ウクライナ国内外で避難を強いられている人々の膨大なニーズに応えるため、国連の多機関による予算計画が拡大されたことを発表しました。この予算計画の概要についてはこちらをご参照ください。

 

ウクライナ緊急事態に対しては、日本国内からも大変多くの支援が寄せられています。
国連UNHCR協会では、支援者様へのメールやウェブサイトでも随時発信している活動報告の一環として、422日(金)に支援者向けウクライナ緊急支援報告会をオンラインで開催しました。
当日の模様をレポートします。

(注)レポート中の数値等はすべて422日の報告会時点の情報となります。ウクライナ情勢についての直近の情報は、UNHCR本部が提供する以下のウェブサイト(英文)等もご参照ください。
https://data2.unhcr.org/en/situations/ukraine
https://reporting.unhcr.org/ukraine-situation

国連UNHCR協会 ウクライナ緊急支援報告会概要

開催日: 2022年4月22日(金)  
時間: 日本時間午後4時(ウクライナ時間午前10時)
質疑応答含め1時間
参加者: 118名
形式: Zoom ウェビナー
進行:
ご挨拶 (国連UNHCR協会 事務局長 川合雅幸)
ウクライナ情勢の背景とUNHCRの役割 (国連UNHCR協会 渉外担当 中村恵)
報告:ウクライナ国内でのUNHCRの人道支援活動 (国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) ウクライナ緊急対応チーム 青山愛)
質疑応答
閉会ご挨拶 (UNHCR駐日首席副代表ナッケン 鯉都(りつ))
司会進行:国連UNHCR協会 報道ディレクター 長野 智子

 

■ウクライナ緊急事態への多方面からの支援と世界の難民情勢

報告会の冒頭、国連UNHCR協会事務局長 川合雅幸より、日本の支援者各位への深い謝意とともに、今回のウクライナ緊急事態へのご支援が、個人や企業・宗教法人等の団体のみならず、教育機関、自治体など日本の幅広い層から寄せられていることをご報告しました。

また、昨年2月のミャンマー、8月のアフガニスタンの政変で、日本社会での支援の広がりが見られましたが、今般のウクライナでは「昨日まで我々と同じような生活をしていた人々が、ある日突然、難民や避難民になる可能性があるという現実への認識が高まり、難民支援に関する日本社会の意識が変わってきた」との所感をお伝えしました。

現在、ウクライナ含め、9000万人近くの人々が難民あるいは避難民として故郷を追われて避難生活を余儀無くされており、その4割が18歳未満の子ども達であること、UNHCRとしては、ウクライナ支援以外にも、アフガニスタン、シリア、ミャンマー等の方々への人道支援活動、中長期的な難民教育支援等にも取り組んでいることをお伝えし、引き続きのご支援をお呼びかけしました。

 

■ウクライナ情勢の背景とUNHCRの役割

報告会の司会進行をつとめる報道ディレクターの長野智子より登壇者をご紹介したのち、国連UNHCR協会 渉外担当 中村恵職員が、ウクライナ情勢の背景と、大規模な緊急事態の際にUNHCRが果たす役割について、そしてウクライナの近隣国におけるUNHCRの人道支援活動について解説しました。

中村の解説資料では1950年UNHCR設立当初のヨーロッパでの難民保護活動から1991年末の旧ソ連の解体前後の状況、そして1994年以来のウクライナ国内での活動についても触れつつ、2月の危機勃発前後のウクライナでの難民支援の状況について概観しました。
 
■ウクライナ近隣国での人道支援の進捗

中村職員より、UNHCRがウクライナ国外への避難の状況を日次で更新しているサイトからのデータを紹介しながら、皆様のご支援により、UNHCRがウクライナ近隣国で以下のような支援活動を展開していることをご報告しました。

UNHCRは、周辺各国政府の全体的な調整を支援するため、調整機構の設立を促進
地域難民対応計画を、約100団体と調整しながら策定
ハンガリー、モルドバ共和国、ポーランド、ルーマニア、スロバキアにUNHCR事務所があり、各国レベルで、UNHCRが主導し、諸機関が連携する難民調整フォーラムと分野別グループが設立され、各政府の努力を支援

具体的な支援事例として以下をご紹介しました:

・緊急の現金給付を実施※
・救援物資(毛布、衛生キット、ベビーキット、スリーピングマット等)を提供
・「Blue Dot」と呼ばれる安全な空間を、ユニセフなどパートナー組織と協働して設置。子どもや家族、特別なニーズを持つ人々が、メンタルヘルスサポート、子どもに優しい遊び場、授乳スペース、ソーシャルサービス、法的情報の入手などに利用できる
・法的支援や社会サービスに関する情報を提供

※現金給付支援および「Blue Dot」施設についての関連記事はこちらもご参照ください

続いて近隣国における国別の支援進捗を以下のとおりご報告しました。
 
ポーランド
現金給付のために登録された難民の総数は14,400人を超え、そのほとんどが女性と子ども。高齢者は6%。クラクフとワルシャワで現金給付登録センターが稼働し、ワルシャワにもう一か所オープンする。Blue Dotが国境通過点3か所に設けられ、他でも増設予定。

スロバキア
現金給付を始めるための方法について、関係各省と検討中。

ハンガリー
ウクライナに向けての救援物資が配備されている。1,600人が法的情報、カウンセリング、心理社会的支援、情報提供などの保護支援を受けた。

ルーマニア
350人以上が現金給付のパイロット・プログラムに登録され、8万人に規模拡大を計画中。難民13,000人以上が、対面または電話でカウンセリン グと支援を受けている。

モルドバ
人身売買の危険性を伝えるチラシが国境地点や宿泊センターで配布。11,000人以上がUNHCRの現金給付プログラムに登録、そのうち70%が女性、11%が60歳以上。 Blue Dotが3か所設置され、さらに2か所増設予定。

■ウクライナ国内でのUNHCRの人道支援活動
続いて、2022年3月からUNHCRウクライナ緊急対応チームの一員として勤務している青山愛職員がウクライナ西部のリヴィウからリモートで参加し、現地の画像やデータを投影しつつ、実際に現地で話した方の声もまじえて報告を行いました。
 
■リヴィウの現状・UNHCRの国内拠点

まずは青山職員が現在勤務しているウクライナ西部の町リヴィウの状況とウクライナ国内のUNHCRの拠点について報告しました。

・リヴィウはポーランド国境から車で2時間程度の位置にある町。「国連(UN)」と表示したバス数台の車列でポーランドから入国した。途中いくつも土嚢を積んだチェックポイントがあり、5~6時間かけてリヴィウ入りした。

・リヴィウの街中は比較的落ち着いており、美しい街並みの中、カフェやレストランも営業している。一方で報告会直前の4月18日にはミサイル攻撃を受け、青山職員の勤務地から30分ほどの位置に着弾し、7名の死者が出た。空襲警報が一日に5、6回鳴るなか、緊張感を持ちながら勤務している。
・ウクライナ国内で避難を強いられている方の数は4月21日時点で770万人。さらに1300万人近くが避難できずに影響を受けている。
・OCHA(国連人道問題調整事務所)が発出しているこちらの情報を参照。ウクライナ国内では、東部・北部から中部・西部に避難する人が急増している。図の中で赤い点で表示されているのは攻撃を受けている地域であり、東部への攻撃が激化していることがわかる。

・UNHCRはウクライナ国内の7事務所を拠点としており、さらにキーウにも拠点を置いて人道支援活動を続けている。今後人員を拡充し、6月には400名体制となる予定。

■ウクライナ国内でのリスクとニーズ
続いて青山職員より、UNHCRがパートナー組織とともに現地で続けている聞き取り調査に基づき、ウクライナ国内で避難を強いられている人が直面するリスクとニーズについて説明しました。

民間施設の砲撃・攻撃への不安を語る人が多いなか、家族離散のリスクや避難所の過密な環境がリスクとなっています。また被害を受けた人、特に子どもたちの精神的な苦痛が懸念されており、対応が急務となっています。

現地では「お父さんに会いたい」という子どもたちの声を非常に多く聞くとの報告がありました。
 
■UNHCRの人道支援活動―3つの注力分野
こうしたリスク・ニーズに対応するため、UNHCRがパートナー組織との連携のもと特に注力している「保護」「シェルター・緊急援助物資の提供」「現金給付」の3分野の具体的な支援内容について、青山職員より説明がありました。

またこのような人道支援と今後の中長期的支援の実施に不可欠なウクライナ政府当局との連携や、現地コミュニティに根差したパートナー組織との連携、物資輸送の際の各方面との調整についても報告がありました。

保護

- UNHCRは地域に根差したパートナー組織と連携して、ウクライナ国内の受け入れ施設・コミュニティを訪問し、避難民からの聞き取り調査を行っている
- 特別なニーズを持つ女性や子ども・高齢者・障がい者への保護とサポ―トの提供、ジェンダーに基づく暴力の被害者の保護などに特に力を入れている
- ドネツクの受け入れ施設での活動ならびに国境地点での活動の様子を画像で紹介
- 国境地点の活動拠点では毎日もしくは週に数回のモニタリングを実施し、一次滞在施設の整備・避難先の国に関する情報提供を進めている
 
シェルター・緊急援助物資の提供

- 非常にニーズの高い分野。リヴィウでも数日前に雪が降り、寒さが厳しいなか、避難民が暖をとれるよう防寒物資の提供などが急がれている
- 砲撃によって損壊した家の緊急補修用シェルター用品の提供
- 過密化する受け入れ施設の拡大・整備
- 今後の帰還に向けた中長期的な住居プラニング
- 攻撃が続く東部地域にも援助物資を届けるため、各方面との調整のもと、これまで国内で12回の人道支援・輸送車隊を稼働完了、3万人への支援を届けた
 
現金給付

- 月約1万円を3か月間提供するプログラムにすでに12万人が登録済み、5月末までに36万人を登録予定
- 家賃・食糧・衛生用品など、世帯ごとに異なる基本的なニーズをカバーすることが可能に
 
■ウクライナ国内での支援実施状況

以下の地図を示しながら、国境地域を含む西部だけでなく、戦闘が激化する東部にも人道支援輸送車隊の稼働により、支援を継続していることが報告されました。

直近のウクライナ人道支援についてはこちらもご参照ください(英文)
 

【開催レポート】4月22日 国連UNHCR協会 ウクライナ緊急支援報告会(後編)に続きます

後編はこちら


ウクライナ緊急支援

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